薬学生のための情報誌『MIL』ではこのたびドラッグストアの経営トップのインタビューをまとめた特別号「NEXT VISION」を発行しました。このwebサイトでも連動コンテンツをお届けします。
薬剤師とともに走り続ける情熱を持った経営者たちの言葉から、まなざしから、社会のなかでその企業が何を目指しているのか、メッセージを感じ取って欲しいと思います。
NEXT VISION
株式会社龍生堂本店
代表取締役社長 関口周吉
せきぐち・しゅうきち●1973年生まれ。帝京大学薬学部卒業後、龍生堂本店に入社。その後、調剤事業部長、営業本部長を経験したのち、1999年に同社取締役。2016年から現職。
薬剤師は社会に貢献するために存在している
それを実現する形はたくさんある
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医薬分業の原点、
薬剤師法第1条に込められた使命
「先を読む」とは、「原点を知る」ということと、ほぼ同義なのではないか――。関口周吉社長の話を聞いていると、ふと、そんな気がしてくる。
薬剤師の将来展望について聞いた際、関口社長が口にしたのは、「医薬分業の始まりである中世のフリードリッヒⅡ世」のことや「薬剤師法第1条」のことなど、原理原則の話である。
その原理原則が、「今、投資すべきはICTの活用だ」という未来の施策につながる。
どういうことか。
例えば医薬分業。中世に王の毒殺を防ぐために、処方する医師と、調剤をする薬剤師を分けたことが医薬分業の原点といわれている。これを関口社長は、「つまり、医薬分業とは“不便利”の追求であった」と解する。そうすると、「門前薬局」という利便性を求めた形は、医薬分業の原点に照らし合わせれば、いずれ解消を求められることは自明の理だったという。
他方、薬剤師法第1条に記されている、社会が薬剤師に求める機能とは何かといえば、「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」ことだ。ここでいう、医薬品とは医療用医薬品のことだけではない。薬剤師はOTC医薬品や医薬部外品、もっと言えば健康食品などを含めた健康な生活に関わるすべての知識を持つべきだと指摘する。
これからの時代、薬局で栄養士や調剤補助士が働く場合もあるかもしれない。しかし、その中で薬に関わるすべての知識を前提に管理監督責任を持つのが薬剤師であるというのが関口社長の考えだ。
だから、龍生堂本店では、その能力が求められる。簡単なことではないかもしれない。しかし、原理原則に立ち返れば、それが当然の姿ということもできる。原点に立ち返った使命を果たすよう努めていけば、「一生、食いっぱぐれないよ」と関口社長は笑う。
希薄になった“人と人とのつながり”
それを取り戻すツールの一つがデジタル
関口社長が、薬剤師の根本的な職業倫理と考えるのが「社会貢献」である。「薬剤師は社会貢献するための職種。社会貢献の形はたくさんある。今行っていること以上に、もっともっと地域のお役に立てることはあるはず。現状のままでいいんだと思わずに、常に社会貢献の姿を考えてほしい」。
そう語る関口社長が自社の今後の課題として挙げるのが、ICT活用による多職種や行政、地域との情報共有だ。
「昭和から平成となり、令和になりましたが、昭和と令和は“和”という言葉が共通しています。昭和の時代にあって、平成の時代に失われてしまったもの、それを取り戻すことが令和の宿題のように感じています。それは例えば“人と人とのつながりの強さ”だったり、“縁”のようなものではないでしょうか。それを実現するツールの一つがデジタルであると受け止めています」。
時代の変遷の中で失われた人との繋がりを、技術革新で新たに生まれた術を用いて再生させる。それを薬局経営の課題として取り組んでいく。
関口社長は常に、自分自身にも社会貢献の在り方を問い続けている。
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取材・文=菅原幸子(ドラビズon-line編集長)
撮影=井之口聡
龍生堂本店の新卒採用エントリー
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